司法書士法人ミライブログ

司法書士法人ミライの職員が、知って得する法律情報などの記事を執筆します

新住所と現住所  法と実務とメリットと

2024年9月17日

「新住所と現住所、どちらで登記手続きをされますか?」

・・・業界に入って十何年、何千回とおうかがいした質問です。

 

この質問を受けて、

『どっちが良いんですか?』

・・・同じく何百回と返された質問です。

 

こうなると、定番の以下のようなご説明をし、選んでいただくのが常でした。

 

「まず、新住所に移して登記をした場合、追って住所変更の登記を入れないで済むというメリットがあります。住所変更登記は、今現在は義務化されていませんが、令和8年には住所移転後2年以内の義務化がなされる見通しで、その際の手続きと費用を省略できます。また借換やご売却の際にも、住所変更登記が済んでいないと同時に行う必要がある為、余分に費用がかからずコストカットになります。

逆にデメリットとしては、購入決済まで日取りに余裕がない中、転出転入の手続きをしなければならないというスケジュール上の慌ただしさがあります。」

 

「次に、現住所のままの登記手続きですが、こちらは新住所手続きの逆です。つまり、メリットは『慌ただしいスケジュールの中、余分な手続きに時間と労力を割かずに済むこと』になり、デメリットは『追って2年以内に、コストと労力を払って手続きをしなければならないこと』になります。加えて税金軽減のために取得する書類の為の必要書類が増えます(取得は出来ます)。」

 

といった感じです。

 

 

 

ところが先日、あるお客様に『それって、引っ越ししてないのに引っ越したと虚偽申告しろってことですか?』と言われて、ハッとさせられました。

お恥ずかしながら、生まれてこの方一度も住所変更手続きを自分でしたことがないため、具体的な手続きで聞かれることなど把握してませんでした・・・汗顔の至りです。

確かにパッと聞く限り、虚偽申告と言われてしまいそうです。しかし、新住所での手続きは普通に広く行われている以上、そう簡単な結論ではないだろうと思い、早速調査開始です。

 

 

まず、ネットの引っ越しブログなどを見てみると、総じて『引っ越し前に住民票を移すのは虚偽の申し込みをすることになる。事例は無いが罰金対象になる可能性がある』と書かれてました。

・・・やっぱそうなのか~と思いつつも、「いやいや、ネットの記事鵜呑みにしちゃいかんでしょ」と、そうした意見の根拠条文をチェック。

 

→住民基本台帳法第二十二条:

『転入(新たに市町村の区域内に住所を定めることをい(う)・・・をした者は、転入をした日から十四日以内に、・・・市町村長に届け出なければならない』

 

・・・あれ?ここ『新たに市町村の区域内に住所を定める』と書いてあるけど、引っ越しすることとは書いてないな・・・、これ、全然法解釈の余地がありますよね?そもそも、転入届を出すことで、新たに市町村の区域内に住所を定めることになるわけなんだし。

・・・まあ、お客様に理論武装して役所と戦えとは言えませんが、この条文だけでは虚偽申告とまでは言われないと思うな~、う~ん・・・

 

となると、実務面がネックなのかな?と調べてみると・・・基本的に役所の窓口は、「引っ越ししてません」と明言した場合、ほぼ間違いなく手続き出来ないみたいでした。

・・・まあ、そりゃそうですかね(汗)。

また、ホームページなどでは、『引っ越し後14日以内に転入届を出してください』と書いてある役所も多いです。おおう・・・

「じゃあ、実際は無理なのか~・・・あれ?じゃあ皆さんどうやって新住所登記やってるの?」と思い、もう少し調べてみると・・・どうやら実際の窓口の対応は、実情を鑑み、あえて突っ込んで『引っ越しは済んでますか?』みたいに確認することはしてないそうです。そのまま何も言わずに届出を受領している役所がほとんどらしいですね(例外もあるようですが)。

 

 

結局、法と実状のせめぎあいになっているみたいです(良くあることとは思いますが)。

まもなく住所変更登記が義務化されようとしている中、現行法はその流れに逆らうかのように新住所手続きの障害となってしまっている、という過渡期にありがちな現状ですね。

まあ、現行法の法改正が来るまでは、この状況が続くのかな~・・・

 

一通り調べてみましたが、結局のところは、上記のようなグレー部分の情報を加味し、メリットデメリットなども勘案し、皆さんに決めていただくという結論部分は変わらないというオチになりました(司法書士に決定権は無いので当たり前ですが💦)。

皆様のご参考になれば幸いです。

 

事務局

梅本

ページトップ